ビオレーサーの開発陣に直接聞いた。風洞実験と、エアロウェアの本当の効果。
BIORACERはアピール下手・宣伝下手なブランドだと思っています。製品の性能は世界トップレベルなのに、その背景にある技術や哲学が表に出てこない。
だから、こちらから聞き出しました。プロダクト部門責任者のエンリコ・アッコルシと、「風洞実験施設のクイーン」と呼ばれる空力開発担当のエラ・レイズに、開発の中身を直接聞いたインタビューがビオレーサーメディアに公開されています。
エンリコ・アッコルシプロダクト部門責任者。イタリア出身。プロチーム・各国競技連盟と連携し製品の企画・開発を統括。
エラ・レイズ空力開発担当。「風洞実験施設のクイーン」の異名を持つ。生地の配置から風洞テストまでを主導。
本社から車で10分。
ビオレーサー専用の風洞がある。
バイクバレー風洞実験施設。最近の改修でシルバーストーンと肩を並べるレベルに達した。
ベルギー本社から車で10分の距離にある「バイクバレー」風洞施設。リドレーグループが所有するこの施設と契約を交わし、毎年かなりの時間をテストに割いている。最近の大規模改修を経て、F1や航空分野でも使われるシルバーストーンの風洞と肩を並べるレベルにあることが公式に証明された。
テストは段階的に進む。まず生地単体のテスト、次に生地の組み合わせパターンの検証、ダミー人形によるプロトタイプテスト、そして最終段階では人間が実際に風洞に入る。人間を使うのは、脚の動きも計測できるためだ。
ベルギーにとって自転車競技は信念であり宗教のようなものです。ビオレーサーはそんな国で、ウェアの開発とイノベーションに取り組んでいる。
— エンリコ・アッコルシ(プロダクト部門責任者)どこに、どの生地を使うか。
CFD解析で決める。
CFD(流体解析)ソフトで体に沿った空気の流れをシミュレートし、どこに乱流が生じるかを把握する。空気が体に沿って流れる場所には滑らかな生地、乱流が生じる場所にはテクスチャー生地。生地の配置は理論的に決まる。
この解析なしに生地を配置しても、空力的な意味はない。エンリコは「不要な部分にストライプ生地を使っているアジアのブランドもある」と率直に語る。デザインに見せかけた空力パターンと、本当に機能する空力パターンは、見た目では区別できない。
風洞実験、実走行テスト、レース環境下での検証——このすべてを経た製品だけが「最も徹底的にテストされた」と呼ばれる。ビオレーサー自社のプロトラボがベルギーにあるため、アイデアを素早く検証し開発サイクルを短縮できる。
通常のウェアとの差は
5〜15ワット。
節約ワット数(実測)
最適速度域
EPIC PARIS ROAD RACE AEROSUIT。プロと同じ素材・工場・品質で作られる。
風洞実験で実証された数値として、最適化されたエアロウェアはレーススピードで5〜15Wの節約になる。プロにとっては勝敗を左右し、アマチュアにとってはより少ない力で長距離を走れることを意味する。
ただし「空力性能が全てではない」とエンリコは言う。快適性・通気性・フィット感も不可欠で、不快感を覚えるとエネルギーが失われる。どれだけ高性能な生地を使っても、体にフィットしていなければ空力的なメリットのほとんどが失われる。
「ウェアの空力性能を高めるにあたって最も重要なことは何か」という問いへのエンリコの答えは意外なほどシンプルだった。「おそらく最も重要な要素はフィット感です。ウェアがライダーの体にフィットしていなければ、空力的なメリットのほとんどが失われてしまいます」。風洞実験もCFDも経た上で、最後にたどり着くのがそこだという。
EDITOR'S NOTE
ビオレーサーの開発陣が直接語るインタビューというのは、これまでほとんどありませんでした。CEOへのインタビューはあっても、実際に手を動かしている人たちの話は表に出てこない。今回はそこに踏み込んでいます。
個人的に面白かったのは「フィット感が最も重要」という結論です。風洞実験もCFDも経た上で、最後にたどり着くのがそこだという話には、開発者の正直さを感じます。エアロウェアを買うなら、スペックよりも先にサイズ選びにこだわれ、ということでもある。
この記事は前編です。後編も近日公開予定とのことで、続きも見逃せません。
— 編集者K
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